システム制御工学とは(大学4年生以上向け)

自然の中で生じている現象の多くは、複雑で不規則なもののように見える。 しかし、このような現象も、注意深く要因をよく整理すると、 いくつかの法則に従って生じていることがわかる。われわれの先人たちは、 長い時間をかけ多くの法則を見い出してきたとともに、 それらの法則をうまく利用することで様々な道具を創造し、 人間社会や地球環境に役立ててきた。 このように人間が繰り返し行なってきたプロセス 「法則の発見とアイディアの発明、そして新しい物の創造」 を体系化し、学問として誕生したのがシステム制御工学である。

システム制御工学という学問が扱う対象は、 自然や人間社会の中のあらゆる領域にわたっており、 超高層ビルや宇宙ステーションのように非常に大きいスケールのものから、 物質の微少構成要素に関わる極めて小さいスケールに至るものまで、 広い範囲におよんでいる。これは、システム制御工学が電気工学、計算機工学、 機械工学や生物工学のように、扱う対象によって規定される性質の学問ではなく、 考えの進め方や創造の方法によって規定されているからである。 したがって、扱われる対象は、時代とともに変わってきており、 今日では、 情報ネットワークや地球環境のことやなども研究対象になっている。

他の分野の工学や科学と同様に、システム制御工学でも、 対象となる自然や物の現象を、正しく把握するところから始まる。 次の段階としては、それらを説明するために現象を整理し、 法則を導くことが重要な過程となる。 このようにして法則が見い出されると、今度は逆に、 どのように手を加えるとどのような現象がおこるかを理論的に予想することができる。 この予想された現象が人間社会や地球環境に役立つものとなっていれば、 そこに新しい制御法が誕生したことになる。

このような特徴をもつシステム制御工学を学ぶためには、まず、 物の現象を記述したり整理するための、 基本的な方法を理解することが必要となる。システム制御工学の学習事項は、 すべてそれを基礎として展開され、創造方法の理論へとつながっていく。 一歩一歩順をおって勉強していけば、これは決して難しいことではない。 そして、システム制御工学の学習では、 理由もなしにただ記憶しなければならない事項はほとんどない。 多くの学習事項は、最も基本的なものから秩序立てて理解していけば、 自然に体系として記憶にためられるはずである。

今日の人間生活は、システム制御工学の成果なしには成り立たない。 また、その成果を利用したために起る自然や社会・環境の変化に対して、 人間は責任をもたなければならない。人類の未来を明るいものにするには、 できるだけ多くの人々がシステム制御工学を正しく理解し、 これを自然や社会・環境の改善・維持に正しく役立てることが必要である。

多くの皆さんが、このように可能性と楽しさいっぱいのシステム制御工学 に興味をいだいて、近い将来、システム制御工学を支える一員となること を期待している。 そして、本研究室で一緒に研究できたら素晴らいと思いう。

システム創成情報工学科・伊藤研究室
伊藤 博